マンホールに落ちた新規の約3か月間の記録

2022年12月30日、Hey!Say!JUMPの15周年コンサートに行った。
有岡大貴さんが全宇宙の法則を支配したことによりJUMPのFCに入会した友人から誘われたのだ。

久しぶりの東京ドーム。

入場ゲートが何番なのかだけで1時間くらい話せるね、なんて笑いながら向かったのを覚えている。

なのに今、マンホールの底にいます。

 

■前提として

私はだいたい2004年くらいからジャニオタをしている。メインで追いかけているのは嵐とV6だが、ジャニオタなのでほかのグループもそれなりに楽しんでいる。
好きな男は増えるものという思想で生きているので、過去にもあっちこっちのコンを社会科見学したこともある。

例に漏れず、Hey!Say!JUMPもデビュー以来ずっと歌番組などでは目にしていた。
嵐の番組にゲストとして来てくれることもあったし、ワクワク学校も来てくれたし。何なら「Hey! Say!」の歌い出しは今でもネタとして使うし。

そんな私が2023年12月29日以前に触れたことのあるHey!Say!JUMPは次のとおり。

  • JUMP NO.1
  • JUMP WORLD
  • smart
  • JUMPing CAR
  • 「OVER」〜「Chau♯/我 I NEED YOU」のシングル8作品

リリース時に都度手に取っていたわけではなく、おおむね「Chau♯/我 I NEED YOU」のあたりで「いいじゃん!」となって、あれこれレンタルしたような気がする。(「愛すればもっと〜」のミュージックビデオ目当てでCDを買ったような記憶もある。サビの合いの手でyeahする中島裕翔さんがやたら可愛かった。)

私はミーハーなので、このグループだったら○○くんが好きかな〜みたいな話をよくするのだが、結構早い時点から中島裕翔さんの名前を挙げていたと思う。なぜなら背が高くて脚が長くてときどき妙なことを言うアイドルが好きだから。

また、これを書くにあたって思い出したのが、人生で一度だけ当選したカウコン(確か2012−2013)でタップダンスを披露する中島裕翔さんにギャー!となったこと。なぜならタップダンスのできる男が好きだから。

今にして思うと、わりと素地はあったように感じる。
ただ、あの頃から今までに私自身にいろんなことがあって、気にかける余裕がなかった。
そんなわけで特に何事もなく、テレビで見かけたら見るくらいの距離感を保っていた。

 

■東京ドームで目にしたもの

いざコンサートが始まると、オープニング映像でいきなり大変な目に遭った。
ネオンビカビカの雑居ビルをバックに派手なカラースーツとオープンカラーの柄シャツでいかにもな賭け事やってる姿を突然お出しされてひっくり返った。説明は省くが私に刺さる属性がてんこ盛りすぎた。取り乱した末、友人に向かって「中島裕翔九龍城編!!!!」と叫んだら指差して笑われた。(次の瞬間、友人はお花屋さんの有岡大貴さんでめちゃくちゃになった)

とはいえコンサートはどんどん進んでいき、知っている曲もたくさんやってくれたので、私の精神も次第に穏やかに楽しむ方にスイッチしていった。花道をゆっくり歩きながらピースひとつで3ブロックくらいを支配する山田涼介さんのスター性すごいな、とかね。

「群青ランナウェイ」のダンスと照明とモニターに映る横顔のシルエットで再びおかしくなりつつも、あの辺たしか怒涛のメドレーだったので自分が何を感じているのかよく分からないまま通過した。
正直セトリはあまり覚えていなくて、そのときに流れる1曲1曲を楽しく見ていた。知っている曲もそうでない曲もあったけど、どの瞬間も楽しかった。
双眼鏡も持っていたのでときどき使い、たまに見かける中島裕翔さんのファンサの細かさにびっくりもした。

そしてやってきたのが「Puppy Boo」である。

 

おいステッキ持ってる!!!!!!

 

前述の通り、タップダンスのできる男が好きなので、ステッキ振り回して踊る男が嫌いなわけがない。気絶しそうになりながら双眼鏡を構え、ヒイヒイ言いながら中島裕翔さんを見つめていたら何か突然停止なさったんですけど!?!?!?
え!??!?!
本人も呆然としてるが!!???!?!?!

目を見開いた顔かっわいい……

呆然かつきちんとおどけた表情で、アクシデント(マイクが倒れた?ステッキが飛んだ?)もしっかり見せ場にしている姿を目にしてしまってからは、もう中島裕翔さんばっかり眺めていた。
キラキラの完璧な笑顔では全然ないのにどうしてと思わないでもないが、でもアイドルってキラキラの完璧な笑顔じゃないところに惹かれるものだろうという気持ちもあって、いまだに心がまとまらない。

コンから帰宅してもあの顔が脳裏から離れなくて、何度も思い出して、日が変わって、カウコンを見て、2023年になった瞬間、JUMPのFCに入会した。


■映画「#マンホール」

FCに入会するとすぐ、連日のテレビ出演がお知らせされるようになった。
中島裕翔さんが主演を務める映画「#マンホール」の宣伝である。

本当に毎日どこかで姿を見るので、どんどんどんどん解像度が更新されていく。
何せほとんどのことを知らないので、目にするものすべてが新しい。情報の濁流に飲み込まれて溺れそうになりつつ、それが楽しかった。あまりの出演本数に、こんなに供給があっていいのかと不安になりさえした。

そして2月10日の公開日を迎え、結果として2月中に3回観た。

映画「#マンホール」は、私の好きなものがあまりにも多く詰まっていた。映画公式がネタバレ厳禁を謳っているので詳しいことは言えないが、こんな欲張りセットみたいなこともう二度とないと思う。私に都合がよすぎる。そんな映画だった。

まず作品として、仕掛けが細かく作り込まれているのが心地いい。
物語の着地するところとして、全然予想していなかったかと言われるとそんなことはないのだが、その結末に至る道筋が整っているので満足できる。
個人的にはネタバレ厳禁にしなくても楽しめると思うのだが、知らずに見たいという意見も分かる。ちなみにハラハラもドキドキもラブも邪悪も憐憫も全部ある。

あとは単純にキャラクター造形がドンピシャだった。
顔のいい男が酷い目に遭うと手を叩いて喜ぶ性質なので、将来を約束されたハイスペック男が泥と血にまみれていくのが最高。長身の男が狭いところで惨めに手足を縮こめているのも最高。次第に明かされていく川村(主人公)の薄暗さと矮小ぶりも最高。
この映画を見て以来、セロテープとホッチキスとマキロンの話を一生している。
「こういうシチュエーションが見たいな〜」の8割くらいが、この映画ひとつで満たされてしまった感じ。これはぼかした書き方だが、500万人の女を手玉にとってなお元カノに感謝を述べて微笑むことのできる男の芝居なんてそうそう見られるものではない。

何より、終盤の「この○がそんなに○○○? ○○前にたっぷり○○○○よかったな」という台詞とそのときの表情が好きで好きでたまらない。物語としてもそうだし、中島裕翔さんがその言葉を口にする意味を考えると脳が揺れ出す。
ここの話をするにはネタバレ必須なので、自分のスマホに感想をひたすら書き溜めている。円盤化して誰でも容易にアクセスできるようになったころ、改めて公開したい。

そしてもう一つ、映画「#マンホール」にまつわる動きとして外せないのがベルリン国際映画祭(ベルリナーレ)だろう。
私は映画にまったく詳しくないので、ベルリナーレに正式招待されることの意義を理解できているかはかなり怪しい。しかしベルリナーレに招待されたことで発生した国外メディアによる取材風景は、見る/読むことができてよかったと心から思う。
その最たるものが、『Variety』だ。

Are you still able to fit in both acting and singing?
――On stage, in front of fans, my role is to shine like a star. 

variety.com

初めて記事を読んだとき、この一文に衝撃を受けた。
『Variety』の取材は、リモートかつ英語で行われたという。つまりこの言葉は中島裕翔さんから出てきたそのままのものだということだ。
アイドルという職業は、ときにキャリアに対する枷やマイナスポイントとして語られることがある。私はそんな見方ぶっ飛ばしてやりたいと思っているけれど、実際にそう見る人がいるのも本当だ。
その事実は、アイドルを好きでいるとき常につきまとう引け目みたいなものだった。

しかしそのアイドルについて、"shine like a star"と綺麗な言葉で語ってくれたのは私にとって間違いなく救いだった。「救い」だなんてインターネットでは使い古された言い回しだけれど、実際に気持ちが軽くなったのだから仕方ない。

この一文を読んだ瞬間、全身がぐにゃぐにゃになって「この言葉にすべてを任せたい」と思った。


NHKドラマ10「大奥」

そして時期をほぼ同じくして、「大奥」も始まった。
「#マンホール」に対し、こちらの水野祐之進は完全に光属性の役柄だった。親切で健気でちょっと自己犠牲的で、それはそれはかわいらしい青年としての演技を堪能することができた。
1話で水野が退場してしまうのは残念だったが、作品として面白かったのでそのまま継続して視聴していた。

そして8話のカムバックでひっくり返ることになる。
おまえのような町娘がい……い…………いるかもしれないね……
アイシャドウがピンクでかわいいよ……矢絣に流水紋とかおしゃれさんだね、誰が仕立ててくれたんだい……上様かな……

私は好きな男の女装が大好きなので、喜ぶより先にTwitterで助けてと叫んだ。もはや命の危機だった。明日事故に遭うのかと怯えるくらい、私に都合がよすぎる演出。どう考えても新規に与えていい刺激じゃない。

2023年1〜3月で怒涛の供給を浴び、これはいよいよ逃げられないなと思った。
自分でやっていることに逃げるも何もないのだが、新たに誰かのファンになるときってものすごくエネルギーを使う。私は本当にこれが好きなのか?という疑いを跳ね除けるエネルギーだ。
ただそんなことを言ってる場合ではないほど、もっといろいろな姿を見たいと思う自分がいた。


■ここ最近見たもの

この3か月間で購入したものは次のとおり。

15周年を迎えたグループに対して、まだまだ追いついていないのはご容赦いただきたい。
オタクにも生活はある。

SorLまでの3作品は、ジャニーズらしいキラキラした演出がメインだなという感じ。みんなで並んで出てきて、たくさん手を振ってくれて、極力こちらから見えるように配慮されたステージだった。

それがPARADEで突然雰囲気変わったのでものすごくびっくりした。マジでどうしたんだという変貌ぶり。
コンセプチュアルであることに振り切っていて、特に説明もない。(あくまで映像作品中での話。当時の雑誌インタビューなどではいろいろ裏話があったのかもしれない)
人によっては胃もたれを起こすかもしれないなというくらい属性を積み上げたOP映像。モチーフを意図するものは想像できるが答えは明言されない。
これが最高だった。

個人的にショー要素の強いものが好きというのもあるが、何より「テーマをゴリゴリに表現したのであとはそちらで受け止めてください」という姿勢が好きだ。感情をかき乱される体験をしたくてアイドルを見つめているので、「ほら考えろ!」と言われると途端に食らいついてしまう。

そんなふうに凝視していたら、何やら複雑な機構が現れた。ムビステがどんどん斜めになり、柱に固定されたメンバーの体が観客の頭上を通り過ぎていく。浮遊してこそいないものの、ほとんどフライングだ。SUMMARY育ちの考える演出こわいよ!と思いながらパッケージ裏のセトリを眺める。「獣と薔薇」という曲らしい。なるほど、だから狼っぽい衣装なんだ。せっかくゴージャスな毛皮を背負っているのに柱固定なのはちょっともったいない気もするな……などと思っていたのも束の間。

 

中島裕翔さんかっっっっっこよすぎる

 

ドアップになった際の睨みでぶっ倒れた。たぶん終盤。ごめん中盤かも。でもとにかく「獣と薔薇」なのは間違いない。
中盤だか終盤だかはっきりしないのは、あまりに強烈な光景だったためにまだ1回しか映像を見てないから。このとき受けたインパクトを失うのが惜しくて、記憶をただ反芻している。そのくらいよかった。

こうなってくると、Fab!円盤を再販してくれという気持ちが育ってくる。あのPARADEの次に何がお出しされたのかを教えてくれ。
単純に、新規が直近のコンサート映像にアクセスできないのもったいなくないですか。とはいえ配信ライブだったということなので、一般流通させるのは確かに博打だよな〜
いずれ何らかの形で見られたらいいなと願っておきます。


■FILMUSIC

最新アルバム「FILMUSIC」の話もちょっとだけしておく。
全編にわたっておしゃれなアルバムだった。
ものすごく今さらなことを言うけど、ネガティブファイターの最初のサビからイントロの入りがおしゃれすぎてビビってる。マジで今さら。でも良いものはいいから……

youtu.be

 

アルバム曲だと「OH MY BUDDY」と「Change the world Y2K」も好き。
「OH MY BUDDY」は芝居がかった感じがたまらない。歌い方もそうだし、歌割りも声質とぴったり噛み合っててよかった。
「Change the world Y2K」は15周年曲としての完成度がすごい。やっぱり15年って長いので、その間に作ってきた楽曲の要素を盛り込まれると嬉しくなっちゃうよね。私ですらそうだったので、ずっと追いかけてきた人はなおさらだと思う。

ただ「ビターチョコレート」からの「君が見た一等星」の流れだけ急にエッジすごくない?
「好意ゆえに己を偽ってまで相手にあわせてしまう」話をしたあとに「たくさんのペンラの中の一粒として見守っています」と誓うって、あまりにもオタクをズタズタにする収録順でびっくりしちゃった。でもオタクって、アイドルがズタズタにしていい存在ですからね。ありがとうございます。

あと楽曲の話ではないんですが、アンサーソング会議で「チョコラタの反対はキャラメル」と言う中島裕翔さんで絶叫したのでここに書いておきます。
甘いものの反対で甘いものを指定することってあるんですね。考え方がサンリオピューロランド。キティちゃんか中島裕翔さんかみたいな感じでやってる?


■shine like a star

嵐が活動休止した2020年、V6が解散した2021年を経て、私はもう誰かのコンサートを見ることはないんだと思っていた。
それぞれの発表があってからは常に最後を意識して動いていたので、丸2年くらい空白を抱えて生きているような心もちだった。
彼らが歌っているからコンサートに行っていた私にとって、彼らの不在はそのまま音楽との離別だった。
実際、通勤時間に聴くものはヒーリングミュージックやクラシックなど、人間の声がしないものばかりになった。舞台や映画は見にいくけれど、どうしたってコンサート会場の熱狂とは異なる。私は相変わらず何らかのオタクだったが、生活は以前より穏やかになった。

そんな中で、Hey!Say!JUMPのコンサートに行く機会が生まれ、その結果こんな文章を書くまでの熱を抱いたのは、まさに星に引き寄せられたとしか言いようのない出来事だった。
その上、その人が"shine like a star"と口にするなんて、私にとっては奇跡みたいなことだ。

もちろん本人の意図は分からないし、もしかすると自身を奮い立たせるためのレトリックなのかもしれない。
それでも、単語がまとうきらめきは確実にある。
そのきらめきに目が眩んで、私は今この文章を書いている。